消えた小説

私はある依頼で大正7年9月の「大阪時事新報」を探していました。普通ならまず国立国会図書館(以下NDL)、あるいは東大の明治新聞雑誌文庫、それでもなければ新聞総合データベース、あるいは地元の文書館、県立図書館などを探すのですが、ある程度部数の出ている新聞なら大抵見つかります。原紙は保存用になっていても、マイクロフィルムになってあちこちに所蔵館がある場合もあります。

ところが、壁にぶち当たりました。ちょうどこの大正7年6月から大正11年ごろのものまで、NDLで欠号になっている。当然NDL製作のマイクロフィルム版も同じ欠号状況。明治文庫もやや地方紙のせいか、この部分は持っていない模様。大阪府立図書館も同様です。

うーん、どっかが死蔵してないかな~と思っていろいろ探索していると、ちょうど大正8年ごろ大阪時事新報に連載された小説に、竹久夢二が挿絵をつけていたことがわかりました。その挿絵集は図書館に所蔵があったので「お、それにどこどこで所蔵って書いてないか?」と期待して、見てみることにしたのでした。

その小説とは、入江新八作の懸賞小説で「凝視」という作品。ところが挿絵集を見てみると、全くその小説は載っていない。あれあれ?と思ってあとがきを見ると、なんと原画を元に作られたものだそう。で、肝心の大阪時事新報はというと、なんと私と同じことをして、「八方手を尽くしたが、見つからなかった」ですって。大阪時事新報のNDL欠号分は、新聞の形では今のところ現存確認ができていない幻のアイテムだったのです。あれまー。竹久の原画だけは好事家に売られて残っていたそうで、もうその小説は見ることができないんだとか。

消えた幻の小説なんて、ちょっとミステリーな感じですよね。

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