日本の新しいニュースメディアは映像から来るか

昔、ブログが登場したときに、「新しい個人メディア」みたいな言われ方をされていました。実際アメリカでは9.11の際にブログが威力を発揮して、「新しいメディア」ともてはやされた記憶があります。

日本では、ブログというと有名人の結婚発表の場とか、コマーシャル的に使われているイメージが強いですし、もともとWeb日記という素地はあったので、一般の人たちも(私もこうして)ブログを書いているのですが、あくまで日記的な要素が強く、実際のところそれほど強い影響力は無いように思います。

どちらかというとニュース的な要素が強いのは、2ちゃんねるのほう。張り付くようにネットワークのことを見ている人たちが、よくもまあ見つけたなーというネタを、既存のマスメディアよりもずっと速く報じたり、あるいはマスメディアは見逃してしまうことや、マスメディアが報じないようなことを(良くも悪くも)拾ってきて、ネタにするようにもなりました。最近ネットで話題になったネタを、既存のマスメディアが後追いで報じるのもよく見ます。正に「事件はネットで起きている」という状況です。

2ちゃんねるの実況板をそのまま映像にしたような「ニコニコ動画」が出てきて、こちらもすっかり定着。前のサイトでもニコニコ動画が面白い(2007年2月9日)というエントリが書きましたが、日本人の視聴行動にぴったりだったのか、順調に利用者数も増えてるようです。既存メディアのコンテンツも入るようになったりして、話題になってます。こちらもまた、映像が持つ強味を遺憾なく発揮したネタが次々と現れて、ネコ鍋から事故の瞬間まで、ありとあらゆる映像が、マスメディアではなくネットに先に流れるようになりました。中にはニコニコ発ヒット曲まで生まれているようで。

こうした流れの中で、先月秋葉原無差別殺傷事件が起きました。UstreamというYouTubeの生放送版みたいなサイトがあるのですが、当時秋葉原にいた人がここで実況中継したりして話題になります。その是非を含めて、個人が提供する映像が、マスメディアではなく直接ネットで流れたということは、報道における発信者の立場の大きな転換点だったのではないかと、新聞記事でも報道されました(2008/6/23)。

7月11日、iPhoneが発売されます。ソフトバンクの旗艦店である表参道店では、午前7時から先行発売することが決まっているそうで(ソフトバンクのプレスリリース)、既に並んでいる人もいるという情報(CNET Japan)が入ってきてますが、この先頭の方、その模様を自分のUstreamチャンネルで生放送しているのです(22時前に電池が切れて中断中)。途中にテレビの取材が入ったりしているのもそのまま放送されてます。「こんな絵を撮りたいんですけど」とか、打ち合わせの様子まで全部。縁石に置かれたノート型MacのiSightから撮ってるものなので、構図とか全く考えられて無いんですけど、その様子がリアルで面白いんです。チャット機能もついているので、ちまちまとコメントが入るのですが、それを読んでリアルタイムに画面の向こうで反応してるので、距離感が妙な感じ。テレビクルーが映している様子も見えましたが、その状況はもうテレビで放送されるずっと前に、世界中に放送されてるわけです。

新聞に対して、テレビは映像と速報性という武器で一気にトップメディアに躍り出ました。ところが、速報性という意味ではネットにはかないません。ただ単に速報性というだけでなく、日本全国に散らばる個人が、目の前で起こる大小様々な事件を次々と「報道する」という現状は、今日この生放送を見てたら、報道の主体が新聞からテレビへと移ったのよりも、もっとずっと大きなパラダイムシフトが来ているのではないかと思いました。文字情報が主体のブログが「個人メディア」なんて騒がれたのとは、レベルの違う波が来てるんじゃないかと感じます。

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