Webcat Plusがガラケー的進化を遂げた件

珍しく図書館的話題。

以下Webcatとはを3秒で理解するものなので、知ってる人は読み飛ばしてください。

Webcat Plusというサービスがあります。全国の大学図書館が協力して目録を作っているNACSIS-CATのデータが元になっています。NACSIS-Webcatという名前でウェブ上の総合目録として利用され、数年前には、進化したWebcat Plusも公開されました。全国の大学図書館の所蔵を一度に検索し、どこにあるかを確認して、取寄せを依頼したり、紹介状を持って他大学に行くときに使われる、大学図書館界には無くてはならない必須ツールです。

前提ここまで。

で、昨日、そのWebcat Plusの新バージョンが公開されました。詳しくはWebcat Plus公開のニュースなどがあちこちにあるのでそちらを御覧下さい。通常、こういう必須ツールはテスト公開して主たる利用者のフィードバックを得るものですが、あまりそういう気は無かったようです。そもそも公開が利用者のいない夜中とかではなく、みんなが利用している「正午頃を予定しています」と書いてある事自体、あまりに感覚がずれていたとしかいいようがありません。そして出てきたものは・・・

なんじゃこりゃ。

1. 「こういうテーマの本を検索」と、「この本を検索」のバランスが取れてない
書籍を検索することって大きくわけて2種類あるんです。なんとなくこういう本を探しているという場合と、このタイトルの本を探しているという場合。なんとなくこういう本を探しているというときは、連想検索とかすごく楽しいし、便利なんですけど、「この本を探してる」ってとき、このシステムでは探しにくいと思う。タイトルキーワードの適合度順表示とかにも対応してないし、検索結果一覧も大量に一覧するような形になってないですし。

2. そもそもWebcatの目的さえ忘れ去られてる
Webcatの最大の機能(それはGoogleでもYahoo!でもできないことで、ある意味最大の売りだと思う機能)は、探してる資料を、全国のどの大学図書館が持っているかを一発で検索できることだったのに、その部分が完全に抜け落ちてる。一応所蔵館は表示されるけど、ものすごく見難いし、印刷さえできない。せめて「この本を持ってる大学をGoogle Mapでマッシュアップして表示する」くらいやっても罰は当たらないと思うんですが。

3. 電子図書云々と言ってるわりに、媒体で絞り込みさえできない
 確かに大学図書館は一般の人には使いにくいです。だから国会の近デジとか青空文庫のような、オンラインで利用できる無料図書を入れてるんだと思うのですが、それにしちゃ中途半端。資料探してる人って大抵急いでるんです。一般人だろうが学生だろうが、通常資料を探すときって、何か目的があり、それには締め切りというものがありますよね。なのに、図書館に行かなくてもいいのはどれなの?!っていう要望に全く応えてない。全文が見られるものだけに絞り込むことさえできない。片手落ちです。個人的には、旧Webcat Plusでは出来ていた雑誌だけの絞り込みができなくなってるのもびっくりです。

4. そして、どこで手に入れるの?!
 3の続きですが、なんとなく主題で探してる人も、本気で「この本」を探してるっていう人も、最終的には書誌情報が欲しいわけじゃないのです。どこにあるのか、どうすれば手に入るのかが重要です。旧態依然とした図書館のOPACでさえ、所蔵館絞り込みができるのに、以前はできていた「所蔵館があるものだけに絞り込む」ことさえできなくなったし、関東圏内とか、そういうこともやる気なさそうなのがなんとも。それだったらAmazonのほうがその場で(1Clickで)買える分百倍ましだよ、みたいな。

5. さらにびっくり、「あなたの本棚」なんて名前なのに、保存できない!
本棚6個作れますって、それいつまで保管してくれるのでしょう。大学で作って、家で見られないなんて。ああ、そうか、「一般人」は、いつでも自分用パソコンを持ち歩いてるから、家用と職場用とか全く別のマシン使ったりしないんですね!

全体的に、「今やれること」をてんこ盛りしたっていうところが、ガラパゴスケータイを彷彿とさせるんです。最初はすごいねーって言われるけど、実際のところそれをどうやって使うのか見えない(多分作った本人たちも見えてない)から、すぐに飽きられる。多くの機能がありながら、全部を使いこなす人は少ない。こういうのって、一般人が使えるとか考えなくて良いと思うのです。自分たちがヘビーユーザーになるような機能を次々と開発して欲しいなあと思うのでした。そして、このデータベースの目的や存在意義を見失わないで欲しいとも切実に思います。

最初は文句を言いつつも、徐々にWebcat Plusに慣れてたのに、リンクもブックマークもNACSIS-Webcatに戻すはめに。来週の学生相手のオリエンテーションはどうすればいいんでしょうね。

ちなみに図書館界でのいわゆるGoogle(スタンダード)は、Worldcatだと思うのです。反論もあろうかとは思いますが、複数の国立図書館の所蔵を含む15億超の書誌データは伊達ではありません。日本の国立国会図書館もデータ提供の契約を交わしています。比べてみてどう思いますか?

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