[movie]100,000年後の安全

原題: Into Eternity
監督: マイケル・マドセン
2009年/デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリア/79分/カラー

世界中で出される放射性廃棄物の処理をめぐるドキュメンタリー。放射性廃棄物は有機物に対して無害化するまで約10万年かかると言われている。世界中にある250万トン以上もの放射性廃棄物は、現在一時的な廃棄所で保管されている。フィンランドでは、地下深くの安定した地層に永久廃棄するため、オンカロ・プロジェクトが始動しはじめた。投棄が終わったら埋め戻されるが、それを10万年後の人間にどのように伝えていくべきなのか。

もっと「廃棄物を出すな」という反原発の話かと思ったのですが、反原発の話ではありません。原子力発電を使う以上、必ず放射性廃棄物が出るが、フィンランドで考えられている最終処分場プロジェクトは、本当に現実的なのかというのがこの作品のテーマです。「放射性廃棄物の問題は、原子力発電に賛成だろうが反対だろうが、今現在生きている人が、後世の人間に対して責任のある問題である」というスタンスで物語は進みます。しかし、10万年という遠い未来へ向けて、本当に安全な処分場などできるのでしょうか。私も難しいと思います。政府の「安全基準」が、本当に安全かどうかがサンプルが少なすぎて分からず、二転三転しているのと同様、誰も10万年後の未来なぞ予測できず、だからこそどういう方策が有効なのか、多くの意見が出されているようです。もちろん、答えは10万年先に行ってみないとわからないわけで、きっと答えなどないのだと思います。中にはヘンに注意書きを作ると、掘り返そうとする人間が必ずいる。我々がピラミッドを「掘るな」と言われても掘り返してきたように、という意見もありました。

この映画を見ていて、「ここには絶対に立ち入るな」とか「◯◯が封じられている」とか言われている場所は、単なる迷信というだけでなく、大昔に放射性廃棄物に相当するようなものが埋められたり閉じ込められたりしたんじゃないかと思ったりもしました。今回の震災で、昔の街道までは津波が来なかったとか、これより下に家を建てるなと書かれた石碑の手前で津波が止まったとか言われていますが、人間や社会はもちろん進歩はしているのでしょうけれども、一方で言い伝えみたいなものは、迷信だと軽視すると痛い目に遭うってことなのかもしれません。

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