2015年9月26日

[exhibition]春画展




 春画、いわゆる浮世絵のエロ絵、エロ本ですが、日本では公開されることは今までなかったそうです。そもそも春画自体は、江戸時代に大名家が嫁入り道具のひとつとして持たせたり、火除け、戦のお守りとして持ち歩いていたものだそうで、西洋のキリスト教的禁欲文化が入ってくる前は、比較的オープンにされていたというエピソードが図録に書かれていました。もちろん、江戸時代には禁制本になったりもするのですが、こうして数々の春画が残っていることを考えると、禁制は表向き、実際はかなりの量が流通していたのでしょう。展覧会でも貸本屋がその流行に手を貸していたというエピソードが披露されています。

 そんな春画展がとうとう日本で開催されることになりました。しかし、開催までは紆余曲折があったそうです。法的に「わいせつ物」にあたる可能性が否定できない作品も多く、一般の博物館・美術館では受け入れてもらえません。名乗りをあげたのが細川元首相。さすがお殿様は違います。永青文庫という細川家の屋敷跡の一部にある美術館で、公開が決まりました。しかしスポンサーは一切つかず、広告を公共的な媒体に載せるのも難しい。展覧会自体も18禁という条件付。台所事情は厳しいとか。

 そんな春画展にシルバーウィーク初日(9/19)に行ってきました。ネットの一部で話題にはなっていましたし、有楽町駅では「問題のなさそうな」浮世絵のポスターが掲示されていましたが、何しろ物が物だけに大々的な宣伝を打てるわけでもなく、公開初日の割には人は少なかったです。ただ、その後NHKのニュースになったりしたのも幸いしたのか、数日後に行った同僚は混んでいたということでした。公式Twitterで混雑状況が公開されています。

 春画、見たことある方は知ってると思いますが、日本のエロ表現は本当に「モロ」なんですよ。裸体の女性とかは西洋の美術品にも沢山ありますが、一応「美術品」の部類に入るものとしては中々刺激的な構図なのです。ただ、暴力的なイメージが強い西洋美術に比べると、そこに愛や滑稽さがあるような気がして、私は好きです。

 そして春画の作者に目を向けると、鈴木春信、北斎、歌麿、国芳など、浮世絵界のスターと言っても過言ではない作者が名を連ねます。現代に例えるなら、スティーブン・スピルバーグが、サンドラ・ブロックとロバート・ダウニー Jr.を使ってアダルトビデオを撮る、そんな(私の勝手な)イメージです。むしろ春画は裏の世界ではなく、それを持っていることがステータスだったのではないかと想像します。

 浮世絵は光を嫌います。使われている絵具が光に弱いのです。そのために浮世絵展はどこも照度を落として展示されます。同じ北斎の赤富士でも、ものによって色が全然違うのもそのためです。しかし春画は大っぴらに公開していないし、特に大名家所蔵物は外に出されてもいないので、色が非常に鮮やかなのが印象的でした。また最後の部屋は細川家所蔵の春画が展示されていましたが、国貞『艶紫娯拾餘帖』のエンボス加工を施した超絶プリント技術は、一見の価値ありです(しかもそれがエロ本だなんて!)。

 グッズはトランクスや春画手ぬぐい、マグネットなど。マグネットは会社で使うとまずいかもなーと旦那と話しつつ、スポンサーがいなくて出版できるかどうかも分からないと言われていた図録(4000円)を購入して帰ってきました。図録はビニール包装(これぞ本当のビニ本!)の上「18歳未満の方の目に触れぬよう、ご配慮ください」といった注意書き入りです。大量に積まれていましたので、是非お土産にどうぞ。

2015年9月13日

[自転車]初秋の大地の芸術祭の里めぐり




前回妻有地区に行った時は棚田メインだったのと、暑さに負けて一部ルートを省略してしまったこともあり、再び妻有に行ってきました。今回は越後湯沢から山越えして松代へ向かい、そこから再び山越えして十日町へ戻ってくるルートを設定しました。

この日、早朝に地震がありました。しかし私はちょうど自転車を漕いでいた時間だったからか全く気づかなかったのです。新幹線のホームで「東京で震度5弱の地震が発生し、運転を見合わせています」とアナウンスが流れていて驚きました。(震度5弱?!)(というか、「東京」ってここのことじゃないのか、私の聞き間違いか?)と頭のなかで大パニックです(笑)。実際に震度5弱の揺れを観測したのは東京西部だったようです。結局異常はなかったとのことで、始発から通常通り運行開始。越後湯沢駅に定刻に到着しました。

新幹線を下りたとたん「寒っ!」と思いました。外の気温計は19度。秋は確実にやってきているようです。


駅を出てしばらく国道17号を行きます。石打というところから353号へ左折、十二峠へ。十二峠は長いトンネルです。新潟のこの地域は、新幹線(上越線)が走る場所と、飯山線が走る場所との間に山が立ちふさがり、どのルートを通ってもなが~いトンネルが待っています。この十二峠トンネルはその中でもマシそうなので、今回のルートを選んだのでした。それでもスノーシェッドからトンネルに突入する私の苦手なタイプです。ここまでもスノーシェッドが沢山ありました。さすが豪雪地帯です。トンネル自体は交通量も多くはなく、路面も綺麗でした。何より最初から出口が見えてる直線トンネルで怖さはありません。ただ長いのには閉口です。


トンネルを抜けると十日町。大地の芸術祭の里の看板と、魚沼スカイラインとの分岐点が現れます。魚沼スカイラインも秋に来てみたいルートのひとつなんですが、9月末まで工事で一部通行止め。十二峠から八箇峠へ通りぬけができません。


この辺りは信濃川へ注ぐ清津川が作った河岸段丘が広がっています。その清津川、ここ数日の雨で水量が増していました。


「ああここは河岸段丘なのか」と思ったのは、この下りを見たとき。正面には清津川が流れていて、ものすごく高いところに橋がかかっています。対岸もかなり高い。沼田の河岸段丘も素晴らしいですが、ここも良いですね。下りて橋をわたる手前に、エントリ頭に置いた写真に出ているアート作品「たくさんの失われた窓のために」があります。トランヴェール6月号で表紙に使われていました。そういえば、橋の欄干に「火焔土器」を型どったオブジェがあったのですが、信濃川流域で多く出土するんだそうですね。知らなかった。


左岸、右岸と行くので、案外上り下りがあります。下のほうに黄金色の田んぼが沢山見えました。もうすぐ信濃川に行き着きます。


田んぼもアートの一部。「中里かかしの庭」です。この辺りの田んぼにこのオブジェが沢山立っているのですが、実際にこの田畑を耕している人たちはどう思っているのでしょう。夜に見たら怖そうですけど。


下りきって信濃川を渡り、再び上ります。すぐに今年はじめて公開された新しいアート作品が見えてきました。2011年3月12日、あの3.11の翌日に長野県北部地震が起こりました。震源地はここから10kmほど。M6.7、最大震度6弱という大きな地震で、私が今回走っていた国道353号は山からの土石流で埋まったそうです。さらなる被害を防ぐために作られた砂防ダムに、土石流を忘れないためのポールのモニュメントができていて、「ここ全体がアート作品ということになっています」(県職員の説明)のだそうです。

真ん中の茶色い筒が砂防ダムです。鋼鉄でできていて、中には土が入っているのだとか。上を緑化することで、周りとの調和を図っているとのこと。


上まで登れるようになってます(金・土・日の10:00-17:00、ただし芸術祭後も開いてるのかどうかは不明)。


上まで登ると、山ごと崩れたのがわかります。怖いです。黄色いポールが、土石流が流れだした範囲を示してます。あまりに広すぎて、もっと上から見ないと範囲がよくわかりません。ちなみにこのポールの先端にはLEDのライトが付いていて、夜は光るそうです。夜も見てみたかったな。


上のところで県の職員の方が、土石流と砂防ダムについて説明してくれました。

また、下の駐車場では物品販売も行われていて、中でも「つなんプレミアムアイス」(400円)は津南の特産品と地元のミルクを使った面白いアイスです。私はスイートコーンをいただいたのですが、どことなくコーンスープっぽかったです(美味しかったですよ)。他にもアスパラとか枝豆とか他では見ないフレーバーや、あまり冒険したくない人には夏いちごとかありました。


再びトンネルを越え、今度は松之山地区へ。前回は緑だった棚田が、今回は黄色に色づいていて、秋だなぁという感じです。田んぼが沢山ある地域は、この時期に走ると本当に綺麗で楽しいです。


キョロロという休憩地点にある「さとやまキッチン」でお昼を食べました。近隣で取れるらしい野菜と、魚沼産コシヒカリを使った贅沢なカレー。定食の決め手の8割はご飯の美味しさにかかってると思ってる私は、このお昼は大変満足でした。


キョロロにもいくつかアート作品があるのですが、「足下の水」というこの作品が一番意味不明でした。作者の方は以前に見た防火貯水槽の工事にヒントを得たそうです。


キョロロの近くにあるのが、美人林。自分で「美人」って言っちゃうところがどうかという感じですが。


ここから一旦松代の方向へ向かって下るのですが、途中松代城址方向へ曲がってからが地獄でした(笑)。これ、本当に(一般)道路なの?という感じの斜度でした。その山にもアート作品が点在しています。また松代城は山だけ残っているのかと思ったら、アート作品の向こうに天守閣?っぽいものが見えました。


私のお気に入りは、リバースシティという色鉛筆がぶら下がった作品。色鉛筆には世界の都市名が書かれています。下から見上げると背中がぞぞっとするような怖さがあります。この作品は2009年から常設のようですが、外で風雨にさらされているので、大分くたびれてる感が出てきてますね。それもまた良い味だしているように思いますが。



松代から今度は林道的な道路を通って十日町へ戻ります。この最後の山越えが本日のメインディッシュでした。かなり硬派な坂道が延々と続く感じ。辛かったけど、時折現れる黄金色の田んぼに癒やされました。中央に見える道路は登ってきた道路です。ぐるっと回って一段上から撮ってます。


この峠を越えると十日町市街地へ降りるだけ。十日町市街にある明石の湯で汗を流しました。明石の湯はキナーレという美術館施設に併設されているので、お風呂の中庭もアート作品でした。お風呂自体も、全体的にモダンなデザインで面白かったです。お風呂入ってる間に曇ってきてしまい、十日町駅ではこんな空模様に。本日はここで終了です。


この辺り、トンネルをうまく避けて自転車で走るととても楽しいです。特にこの時期は田んぼが綺麗で、おすすめです。

本日のルート




2015年9月1日

蔦温泉と蔦七沼

今回、青森に行こうと思ったのは、蔦沼を見てみたかったからでした。JR東日本の真っ赤な山のポスターで知る人もいるかと思います。紅葉には早いけれども青い時期の沼巡りも面白いだろうと、蔦温泉旅館に泊まって見てきました。

蔦温泉旅館は、震災の影響もあって2年前に経営が事実上破綻し、今は青森の城ヶ倉観光という会社から支援を受けて経営しています。当時レストランなどを入れ替えたそうですが、今年の春には本館をリニューアルしたそう。外向きは酸ヶ湯のように東北の山の中にある古い温泉場ですが、中は綺麗です。一方で源泉の上に置かれた湯船とか、全体としての雰囲気は変わってなく、とっても趣のある旅館でした。「掛け流し」ならぬ「湧き流し」と書かれていましたが、湯船の底からぽこぽこお湯が出てるのです。その上にいると結構熱い(源泉は47度ぐらいあるそう)。蛇口はなくて不便ではあるのですが、それもまた秘境温泉ぽくていい。かつて今上陛下がお休みになったこともあるという楓の間は、今は休憩所になっていて誰でも入れます。そこには湧き水がサービスで置かれていました。お食事も美味しかったし、量もちょうどよかったです。朝のバイキングに蒸し桶を使った蒸し野菜が出たりして、「現代のサービス基準に合わせつつ(ここ重要)、鄙びた秘境温泉の雰囲気を残してる」(褒めてます)と思いました。





ポストは集配時間が書かれていないので、恐らく飾りです。

蔦七沼のうち6つは、この旅館の周りをめぐるようにあります。一周約3km、ゆっくり歩いても1時間ちょっとくらいです。遊歩道も整備されていて、「沼めぐり」の道標に従えば迷うことはありません。


まずは蔦沼。お天気の良い時は向こうに山が見えるそうですが、残念ながら雲に覆われていました。逆に靄がかかった人気のない静かな沼は、幻想的で綺麗でした。東山魁夷の絵みたいに、白い馬が現れそう。


ここから道は上へとたどり、蔦沼を下に見下ろしながら進みます。次に見える沼が鏡沼。


鏡沼は上にある月沼から水が注いでいるそうです。途中に小さな渓流も。


上から注いでいるということは、ここからも再び上りです。しかもつづら折り。月沼に到着。水の美しさが特徴だとか。確かに底に沈む木がはっきり見えます。


登りきったところから下に見えるのが長沼。沼のそばまで行くことができます。


峠を越えて下っていくと、菅沼との分岐があります。菅沼へは本線からかなり下ります。


ここに行った時、私が来る音に反応したのかサギ?が沼の向こうに渡って行きました。写真中央に白い細長い鳥が見えているのですがわかるでしょうか。他にも鳥が沢山いるそうですが、声が聞こえるだけで姿は見えませんでした。その代わりに小さい蛇とカエルを見ました(踏みそうになりました)。また、昨日の奥入瀬渓流もこの蔦の沼めぐりも栃の実の殻があちこちに落ちていたのですが、殻だけで実が無いのがちょっと気になります。最後の沼はひょうたん沼ですが、そこに「熊注意」の看板がありました。やっぱりいるんですね、熊。

「蔦七沼」と言われますが、7つ目の沼は、蔦温泉から道路をもう少し上がったところにある赤沼です。歩いて行くとちょっと遠いかも。

秋にも来てみたいなあ。ただ、秋は今の時期と違って人も多いのでしょうね。あとは冬かな。今でもかなり不便な場所にあるし、豪雪地帯なのでたどり着けるのかもわかりませんが、雪が積もるけれどもスキー場からは遠く、交通不便で静かな温泉という例年の「雪見温泉の旅」の条件にぴったりです。

なお、蔦温泉で聞いたところ自転車の場合は電気自動車の充電施設のある倉庫(もちろん屋根あり)で保管してもらえるそうです。自転車で来る方も実際にいるそうですし、今度こそ自転車で行きたいです。

緑の奥入瀬渓流散策(石ケ戸〜子ノ口)

夏の終わりの旅行は十和田へ行ってきました。秋の奥入瀬は渋滞と人出で大変なのだそうですが、盆を外した夏休みも終わりの8月末にもなると人は少なくなるようです。本当は自転車で八戸-十和田-青森を登る予定でしたが、お天気が読めなくて断念。渓流探索に変更しました。

青森は遠いです。特に十和田湖は有名な観光地なのに秘境に近いレベルです。八戸駅まで東京駅から新幹線はやぶさで3時間弱。そこから更にバスで2時間。そのバスは路線バスなのに途中の道の駅でトイレ休憩があるのです。まあそんなこんなで石ケ戸という渓流歩きの休憩スポットに到着したのは11時15分頃でした。


ここでおにぎりとお水を買い、早速渓流散策へ向かいました。目指すは十和田湖、子ノ口まで約9kmです。休憩所で買ったおにぎりは、途中滝を見たりしながら食べたのですが、塩気が調度よくて美味しかった。おすすめです。

渓流沿いには遊歩道が整備されていて、こんな道をひたすら歩きます。



奥入瀬というと、川の流れが綺麗というイメージがありました。もちろん、渓流はとても綺麗です。


その渓流に沿いながら、あるいは岩を迂回しながら、さらには木の橋で渡りながら遊歩道は続きます。


渓流に削られた周りの岩が見事な崖を形成していて、それも面白いです。


そうした崖にはあちこちに水が流れ、滝となっています。


最も落差のある滝が雲井の滝。ここにバス停があって、石ケ戸からここまで歩く方が多いのか、バス待ち列がありました。また、雲井の滝を過ぎると人が激減。遊歩道も狭くなり、道の両側から伸びきった草をかきわける感じになってきました。


上り下りも案外多くて、渓流よりもかなり高いところにある橋を渡ることも。



木々の向こうに見える優雅な滝も沢山ありました。


この渓流を歩いていて、案外人手が入っていないんだなと思いました。倒れた木はそのままにされ、やがて水に沈んでいるものもありました。遊歩道に倒れてしまった大木は避けられたり、切られて片付けられたりしていますが、基本的にそのままな感じが良いです。後で調べたところ、奥入瀬は人手を入れないことを是としているそうですね。



最後クライマックスが、幅の広い銚子大滝です。銚子大滝手前の辺りから、再び人が増えて、道幅もやや広くなります。銚子大滝を過ぎると、子ノ口まであと少し。


銚子大滝から百両橋まで遊歩道は閉鎖されていました。少しだけ国道を歩きます。

十和田湖の手前に水門があります。カルデラ湖である十和田湖から奥入瀬渓流へ水が流れているわけですが、この水門で人工的に水量を調整しています。観光時期(5月から11月頃)は昼間だけ多めに流し、夜間と冬季はもっと少ない流量になるそうです。水量が大幅に増えることもないので、水流を遮る岩に苔が生えて、美しい景観を保っているのだとか。


ここから十和田湖は静かな流れ。水の色も青みが強い気がします。


十和田湖到着。残念ながら曇り空でした。


3〜4時間と書かれていましたが、我々が普通に歩く感じでは、約2時間で踏破できます。奥入瀬渓流は本当は焼山という場所から子ノ口までの14kmを指すので、全踏破を目指す方は、焼山から歩いてみましょう。