[exhibition]原安三郎コレクション 広重ビビッド

江戸が流行りなのか、サントリー美術館では歌川広重の展覧会が開かれています。浮世絵は職場に沢山あるために、有名なものは大抵見ていると思うのですが、今回の原レクションはほとんどが初摺、しかも保存状態が非常に良いものだそう。浮世絵は光に弱く、保存状態によって全く違うものに見えるので、どんなものだろうと思って観に行ってきました。

連休に入って若冲展はさらに行列が悪化しているそうですが、広重も有名なはずなのに拍子抜けなほど空いてました。一枚一枚じっくり見てても全く問題ありません。全てに解説がついていて、しかも現在の風景写真までついている至れり尽くせりの展覧会です。

この展示の目玉は、原コレクションからは初めての展示となるらしい「六十余州名所図会」。通常浮世絵展では揃物は分割し、途中で2,3度展示替えをするのが常ですが、「六十余州」はなんと本当に揃いで出ています。全期間展示するそうです。ワンフロアで浮世絵諸国巡りができる趣向。それだけでも見る価値ありです。コレクションの中でも重要な一点らしい「阿波 鳴門の風波」。その青がすごく綺麗。さすが一度も展示せずに保存されていただけあります。ちなみに「六十余州」は国会図書館デジタルコレクションにもあるのですが、ぜーんぜん違います(デジタル化し、しかもパソコンで見ている時点で色は変わって見えますが、これは違うと思う・・・)。他の作品も青や赤の鮮やかさ、そして初摺だからこそ行われている手の込んだ技術が見られます。

六十余州のあちこちの名所が出てくるので、知ってるところも多いです。というか、これは自転車乗りたちがあちこちに行って写真を撮ってブログにアップしてるのと同じ感じかもしれないと思うほど、自転車で走った場所が出てきます。例えば「飛騨の籠わたし」は、神岡町と富山市の間の宮川のものと解説にありました。昨秋にそこを自転車で通りました。今は大きなトンネルになっている越中と飛騨の境です。「安房 小湊内浦」は、先日行った勝浦の漁村そっくり。「上野 榛名山雪中」には榛名神社。「信濃 更科田毎月鐘台山」は言わずと知れた姨捨の棚田ですね。江戸は浅草寺なのですが、夜の賑わいが伝わってくるような描写に空には沢山の星が描かれていて、当時は星が見えたんだろうなとも思います。

もうひとつの目玉が「名所江戸百景」。しかし、さすがにこれを百枚(実際は120枚)並べるわけにはいかなかったらしく、半分づつ展示し、途中で展示替えを行うことで期間にわたって全点を展示するようです。こっちも揃いで出ているのかと思ってましたから、少し残念。「名所江戸百景」を私が面白いと思うのは、すごく馴染みのある地名が出てくるからなんですよね。隅田川の橋は今も(名前だけでも)残るものも多いですし、下町は当時からの名前が今も地域名として残っていたりするので、あああの辺りかとも思います。神社の場所は変わらないですし、川は暗渠となっても道路となっている場合が多く、橋の名残があったり、その道筋(川筋)はあまり変わっていなかったりもします。変わっているところ、変わっていないところを調べてみるのも面白いです。

広重の代表作というと、やはり「東海道五拾三次」ですが、それも何点か出ていました。前半は「日本橋」と「蒲原」。後半(5/25-)は「箱根」と「庄野」が出るようです。全体的に保存状態の良いコレクションなので、特にカラフルな「箱根」は面白いのではないかと思うのです。後半も行けるかな・・・

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